2016年前半の短歌
Twitterとは。
挨拶も交わさず星を贈り合うのが今日のコミュニケーション
つぶやきが君のアンテナ掠ったら黙って星を光らせなさい
ソーシャルな愛を安売りしたくないぼくらに星を返してほしい
液晶の窓に浮かんだ文字だけの弱い絆がぼくらのすべて
* * *
飲み会ぼっち。
饒舌な酔いどれ人に囲まれてぬるむ刺身を噛み締めた夜
* * *
地球照の夜。
三日月の欠けた部分を照らしてる地球の光のぼくらは一部
* * *
目が覚めた後に出かけるあてもなく ぼくの前には空だけがある
* * *
化学室観察日誌普遍的絶望生成過程報告
たましいがしずかに凍りついたあとゆるりと融けて絶望となる
* * *
観察され短歌。
この夏はあの子の庭の朝顔になって観察されていました
ぼくよりもきみの方こそアルマジロ珍獣決定戦で勝負だ
* * *
夢三首。
夏の夜の夢と夢とが混線し溶けあって壮大な宇宙史に
受信する夢と夢とのあわいには地球のための小さな祈りを
夢を見ている夢をみている夢を見ている夢をみている私
* * *
帰るべき巣をつくれない僕たちに夜のひかりはいつもやさしい
この森にさざめく声をかき寄せて祈りにかえる八月の魔女
楽園を追われたけれど知恵の実を齧ったことは悔いたりしない
スケルトン自動車走る透明な生き物が棲む島をめざして
蒼天を駆ける空色飛行機は世界を青に導くだろう
メロディになりそこなった雨音を拾いあつめて降るラグタイム
悪役になりきれなくてきらきらと緋色の羽根を振り撒くぼくら
(走れない)地球の重力1Gが1.5Gになる月曜日
ト短調の吐息と寝息だけ乗せて終バスはゆく夜の向こうへ
ピアニシモの吐息でしゃぼん玉を吹くようにやさしい沈黙(しじま)がめぐる
帽子から次々跳び出す鳩や花、リボンのように語りあいたい
お喋りな君の指から蝶々が舞い降りてきてこの指とまれ
歩いても歩いても家に帰れない夢から醒めたあとの秒針
人の世の蜜に焦がれた咎ゆえにこの地に生きるわれら流刑囚
空想の裡(うち)に重ねた罪を知りつつ裁かない天日(てんじつ)の眼は
バーゲンセールにされた世界を生きている魂さえも稀釈しながら
倫理学教師が夜ごと訪れて花を散らしてゆく裏通り
降りそそぐ龍の涙を掌(て)に受けて沁みゆく爬虫類のにおいに
火星発アラームも犬の呼び声も巻き込んで夏蟲交響曲(なつむしシンフォニー)
アンドロイドの踊り子たちは偽りの楽土の夢を舞いながら散る
蟲や樹の御魂がヒトに輪廻する秘史を忘れて虐殺の庭
冥闇(くらやみ)の淵に彫られた傷痕が花になる日を待ち焦がれてる
木洩れ陽も猫もわたしも生塵もすべて一つになるeuphoria
☆参照: http://newmoon555.jugem.jp/?eid=514