水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【連作短歌】交換/交感/交歓

液晶の窓をひらいてこの国にひしめく鳥の囀りをきく 現実(リアル)では出逢えなかった君や君と不意につながる文字列(テクスト)の波 暗号を解く鍵もまた暗号で送るしかなくて捩(もじ)れる文字が チューナーを君の周波に合わせたら ぼくはいま変声期のV…

【連作短歌】時間製造工場

いつの間にやらつぶれた店の跡地にはどこもかしこもセブンイレブン この国の時間を赤く塗りつぶす工場としてコンビニは建つ コンビニの本体よりも駐車場がだだっぴろくて暮れる郊外 クレジットカードを持たぬ大都市の貧者のためにFamiポートあり レジの…

【連作短歌】 チョコレート大博覧会

※チョコレートを愛するすべての女性に贈ります。 ショコラトリーひしめく二月の博覧会 人、人、人の瞳(め)は弾んでる 折れそうな自分のためにチョコを買うおんなのひとはみんなかわいい いきたくてたどりつけない迷宮の壁の向こうのラ・メゾン・デュ・ショ…

【連作短歌】 働くことは尊い

労働と称するしずかな戦争に破れて散ったあの子も私も 息をするだけでお金が減っていく家賃年金健康保険 病院で支払う医療費分さえも稼ぐ力がなくて死にたい 生命力ゼロの私が働けば経済効果はさらにマイナス 社会とは働く人のものである——私に社会は存在し…