水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【連作短歌】惑星システム21

ゆびさきで触れた位置からじりじりと歪みはじめる世界の喘ぎ 奇跡から放り出されて着地した砂浜のすな すこしつめたい どんな夢も打ち切りにあうそのときのために集めた銀貨をつかう この惑星(ほし)の軌道がゆらりずれてゆく出逢い損ねた二人のために たま…

【連作短歌】月のマイルストーン

穢された月の記憶がよぎる空、あなたの嘘を曝くさきぶれ 語れない罪を負うひと月の夜はつきのひかりにさえ怯えつつ なまぬるい外気に触れて ささくれた言葉にバンドエイドを巻いて ただひとりの闘いひとつ終えるたび拡がってゆくかなしみの染み 弱くあること…

【連作短歌】神の箱庭

好きだった歌のたそがれ音符ごと黒板消しで消したい夏だ 敵意よりやさしく嫉妬よりぬるいトマトはすこし熟れすぎている 駆けのぼるほど腐ってゆく人間もかつて信じた夢の果実も 売文屋、かなりや殺しの罪隠し吹けば飛ぶよな言の葉の檻 生き延びろ。闇に愛さ…

【連作短歌】cyberspace 2017→2016

甘やかなサイバーテロの標的になったVOCALOID(ボカロ)を巡る文字列 私の内部のある種の回路がすり減ってゆく剥き出しの視線の下で 「悪の側(がわ)に立つ」ときこえた電磁波にまぎれて声はすこし掠れて 天上の窓から文字が降りそそぎ それがぼく…