水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

【連作短歌】 旅立ち

 

生き終えた樹木が朽ちてゆくようにわたしの湖(うみ)も乾きはじめる

 

なつかしい匂いの部屋に包まれて時計の音に別れを告げて

 

にんげんのかたちを解いて生命のはじまりの夜を迎えにいこう

 

ひび割れた記憶の束はぜんぶぜんぶベッドの上に置いて、わたしは

 

ひかる窓ひかる天井ひかる扉(ドア)ひらいてひかる道がうまれる

 

澄みきった青い空へとつづく道 眩しくてそう、なにも見えない

 

なにもかもひかってるからもうわたし光らなくてもだいじょうぶだね

 

やすらかに眠れわたしが呼吸する機能を終えたあとの世界よ

 

 

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