水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

【連作短歌】夢の消息

目蓋との境に闇が満ちるときからだは粒子となって散らばる イヤホンをしたまま夢に降り立って、エイトビートで駈ける草原 曲調が緩やかになる風音とやさしく睦みあう夜想曲(ノクターン) 近づくと幽かに土をふるわせてジムノペディが湧き出る泉 チャンネル…

【連作短歌】言葉を殺す

こころにもない音ばかり瞬いて今夜しずかに言葉を殺す 腐敗した肉の獣に正装を着せてきらきらさざめく思考 諦めたあとの優しい沈黙が未明の白を閉ざしつづける 生きている人をどこまで愛せるか問うように日は朝をはじめる 血みどろの語彙をあつめて血まみれ…

【短歌】二重春時間

透明な糸をつたって曲技団(サーカス)の夜から夜へとわたる白蜘蛛 風を呼ぶ桜の声は重低音バッドニュースは遅れて届く 早春の傷癒えぬまま息を継ぐタンポポの孤独デイジーの罠 淡色のかなしみ手ざわりもあわく夕光(ゆうかげ)に溶けのこるシロフォン いっ…