サイバースペース5部作
ゆびさきで触れた位置からじりじりと歪みはじめる世界の喘ぎ 奇跡から放り出されて着地した砂浜のすな すこしつめたい どんな夢も打ち切りにあうそのときのために集めた銀貨をつかう この惑星(ほし)の軌道がゆらりずれてゆく出逢い損ねた二人のために たま…
穢された月の記憶がよぎる空、あなたの嘘を曝くさきぶれ 語れない罪を負うひと月の夜はつきのひかりにさえ怯えつつ なまぬるい外気に触れて ささくれた言葉にバンドエイドを巻いて ただひとりの闘いひとつ終えるたび拡がってゆくかなしみの染み 弱くあること…
好きだった歌のたそがれ音符ごと黒板消しで消したい夏だ 敵意よりやさしく嫉妬よりぬるいトマトはすこし熟れすぎている 駆けのぼるほど腐ってゆく人間もかつて信じた夢の果実も 売文屋、かなりや殺しの罪隠し吹けば飛ぶよな言の葉の檻 生き延びろ。闇に愛さ…
甘やかなサイバーテロの標的になったVOCALOID(ボカロ)を巡る文字列 私の内部のある種の回路がすり減ってゆく剥き出しの視線の下で 「悪の側(がわ)に立つ」ときこえた電磁波にまぎれて声はすこし掠れて 天上の窓から文字が降りそそぎ それがぼく…
液晶の窓をひらいてこの国にひしめく鳥の囀りをきく 現実(リアル)では出逢えなかった君や君と不意につながる文字列(テクスト)の波 暗号を解く鍵もまた暗号で送るしかなくて捩(もじ)れる文字が チューナーを君の周波に合わせたら ぼくはいま変声期のV…