水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

【連作短歌】 星の時間を生きる

 

金のペン銀のペンから星が降る何もない日をきらきらにする

 

逆走の水星(マーキュリー)おどけた声で古い手紙を曝きはじめる

 

宝石のような時間を終えてやや恥ずかしそうに宵の金星(ヴィーナス)

 

眼に映るすべてのものを焼き尽くす前の乾いた胸に火星(マルス)は

 

木星(ジュピター)がわたしの部屋を訪れる日は花束とゆびきりしよう

 

ぼくたちが時を尽くして運ぶべき石を教えてくれる土星(サターン)

 

蒼白の天王星ウラノス)が掌(て)をひるがえし世の理(ことわり)を覆す真夜

 

君のいた夏もダリアの告白も海王星ネプチューン)が視せるまぼろし

 

冥王星(プルート)の力をもてあました末の夜 何度でも君はよみがえる

 

ばらばらになってしまったぼくたちに同じひかりが零れる奇蹟

 

金星と火星が出逢う宙(そら)の図を描いて星の時間を生きる

 

 

◎自作解説: http://newmoon555.jugem.jp/?eid=556

 

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