水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

【短歌】夏の散歩道

 

森をゆく 梢を鳴らす風音に耳をふさいでずんずん歩く

 

樹がとぎれ空がひらけてその下に団地の群れがぎゅうぎゅう光る

 

   *     *     *

 雨。

雨粒がやけに大きい夕立に打たれて走るでもなく濡れる

 

青空が見えているのに強くなる雨のあしおとまた遠くなる

 

濡れた服はすぐ乾くから雨なんかなかったことにして歩きだす

 

   *     *     *

 

仰向けで寝ているだけだ。まだ死んでないからと蝉、翅で語る

 

   *     *     *

 

 夜。

光源がいたるところに夜の道いくつもの影を従えてゆく

 

星あかりを吹き消しながらジェット機は赤や黄色のウインクを撒き

 

鞦韆(ぶらんこ)にゆれて木星また揺れて夏の夜風はざわざわしてる

 

星の鳴る音を額にあずけたら耳から耳へ途切れがちのカノン

 

 

 

 

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