水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

【連作短歌】沈みゆく春に

 

花びらにひらりひらりとウイルスを宿しいのちを削る桜よ


恋じゃない恋じゃないけどこんなにも掻き乱される見えない君に


綻びてゆくシステムは日常の息の根をゆるやかに縛って


春の陽を感じていよう咳をしただけで独りになる車両でも


祈るように手を洗いつつ沈みゆく春のひと日をひそやかに抱く


週末は超カラフルなマスクして知らないひとと接触したい


カフェオレを手に純粋な死について語り合えた日を奇跡と憶う

 

 

 

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