水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

【連作短歌】春の回廊

 

春が来る 眠れる土に高らかなボレロを響かせて春が来る

 

アーモンド、杏、さくらに似た花をあつめて春の回廊とする

 

三月の風の針先つついたら染井吉野のけはいが覗く

 

四月にはいろとりどりのキャンディーが空からこぼれおちてはひらく

 

冬鳥の消えた池には龍が来てみどりの声を意訳している

 

乱視の眼、貸してあげるね。木洩れ陽がイルミネーションみたいにずっと

 

昨日より淡いさくらのまなざしを風のデータに閉じ込めてゆく

 

騒ごうよ サービス精神旺盛な孔雀に羽根を分けてもらって

 

春暮れて木香薔薇で飾られた家をこころの地図に泛べて

 

大いなる雲を畏れているときもまぶたに花を絶やさぬように

 

 

 

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