水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

【連作短歌】夢の消息

 

目蓋との境に闇が満ちるときからだは粒子となって散らばる

 

イヤホンをしたまま夢に降り立って、エイトビートで駈ける草原

 

曲調が緩やかになる風音とやさしく睦みあう夜想曲ノクターン

 

近づくと幽かに土をふるわせてジムノペディが湧き出る泉

 

チャンネルが替わって夢は第二章、旧い校舎に制服で立つ

 

どこまでもつづく廊下のリノリウム窓のかたちの光沢を踏む

 

黒板にヒエログリフの伝言が残されたまま朽ちる教室

 

図書室は黴のにおいに包まれて誰も読まない『レ・ミゼラブル

 

色褪せたマルドロールの一〇〇頁開いてきみの消息を知る

 

覚醒はいつもと同じベルの音 夢の余韻をあとすこしだけ

 

 

 

note.com