水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

【連作短歌】 働くことは尊い

 

労働と称するしずかな戦争に破れて散ったあの子も私も

 

息をするだけでお金が減っていく家賃年金健康保険

 

病院で支払う医療費分さえも稼ぐ力がなくて死にたい

 

生命力ゼロの私が働けば経済効果はさらにマイナス

 

社会とは働く人のものである——私に社会は存在しない

 

いなくてもいい存在である僕のために働く医師は尊い

 

(ISの戦闘員となることも就職先の一つではある)

 

労働に駆り立てられて倒れても倒れてもまた駆り立てられて

 

 

(初出:「かばん」2017年5月号)

 

◎自作解説: http://newmoon555.jugem.jp/?eid=557

 

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