水の領域

瑞木理央(みずき・りお)の短歌と詩

2016年後半の短歌

 

宿題を残したままで夏暮れて霧の向こうにあるはずの湖(うみ)

 

懐かしい玩具(おもちゃ)の声に微睡んで退化してゆくぼくらに繭を

 

古代都市遺跡にあそぶ縞猫の尾にきざまれた裏クロニクル

 

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 秋三首。

運命は低いところが好きだから転がってゆくドングリの群れ

 

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しんしんと直視できない日輪を水は宿して死の際(きわ)に沿う

 

 

 

ゆわゆわわ水面に揺れる落ち葉より自由なものがこの先にある

 

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 2016年10月、名古屋市内の繁華街にて、革マル派デモに遭遇。

ゲバ棒をふるう人なき平成に何を守るか白ヘルデモ隊

 

メタリックブラックの街宣車からやけに滑舌のいい罵声を浴びて

 

異端的政治活動いつまでも闘えトムとジェリーのように

 

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 パレーシア。権力を握る者に、勇気をもって真理を述べること。時に命がけで。
青き死を懼れぬ者に託された闇がひかりを刺すパレーシア

 

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怒りの日(ディエス・イレ) 天上界の非論理に焼き尽くされたあとの祈りは

 

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 チョコレートの誘惑。
論理よりレトリックより馨しいチョコレートには宇宙(コスモス)がある

 

純粋なカカオはひとを狂わせる次に虜囚となるのはあなた

 

カカオより歌を信じているのなら苦くて甘い音で応えて

 

※作中主体はチョコレートです。

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言の葉の飛び交う庭に招かれて私の辞書も攪拌(かくはん)される

 

ヘリウムを吐き出すように笑ってる群れからすこし離れてねむる

 

またねって手を振ったきり君はもう夏を振り向くことさえなくて

 

 

 

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